まんぷくまなこ

文学部美術史学専攻卒の穂葉るながお届けする、美術に関するブログ。素敵な作品と作家さんを紹介します。たまに人材や教育の記事も。

薔薇と月光を愛した画家アンリ・ル・シダネル

はじめに

今回ご紹介するのはフランスの画家アンリ・ル・シダネルです。

離れ屋[ジェルブロワ]

アンリルシダネル

こちらの作品をご覧ください。「離れ屋[ジェルブロワ]」(油彩/カンヴァス ひろしま美術館蔵)です。ほのかにオレンジ色が灯る窓辺と、夜闇の中で輝くバラが美しいですね。私は美術館でこの絵を見て、遠目から見たときバラが浮かび上がって光って見えて驚いたのを覚えています。

http://www.graphicine.com/henri-le-sidaner-addicted-to-life/から画像を引用

「月明かりの庭」

緑のシダネル

画面いっぱいに広がる様々な緑。中央には石膏像のようなものが月明かりに照らされています。本当にこの庭にたたずんでいるような気持ちにさせてくれる絵ですね。

※画像はhttp://www.tokyoartbeat.com/event/2011/D31Bから引用

生い立ち

シダネルは1862年にインド洋のモーリシャス島で生まれ、パリに出て アレクサンドル・カバネルのアトリエで学びます。1882年には高等美術学校エコール・デ・ボザールに入学。1年程従軍したのちに再びカバネルの下で学びますが、方向性の違いからその元を離れます。印象派や新印象派写実主義象徴主義の影響を受けながらも独自の作風を確立していきました。

シダネルはパリ北方の小さな村ジェルブロワを愛し、1901 年には中世の面影が残るジェルブロワに移り住みます。当時のジェルブロワは過去の宗教戦争の影響で荒れていましたが、シダネルは自宅の庭を薔薇園にし、さらには村全体を薔薇で埋め尽くすことを村の人々に提案しました。村の人々はシダネルに共感し、季節になると薔薇が咲き乱れるようになったジェルブロワは現在「フランスの最も美しい村」の1つに選ばれています。シダネルはその後ヴェルサイユに移り住み、1939年に第2次世界大戦勃発の数週間前にその地で亡くなりました。

おわりに

いかがでしたか?人物のいない風景画で人の心を打つものを作り上げるシダネルはすごいですね。それでは、今回もみなさんに瞳の至福が訪れますように!