まんぷくまなこ

文学部美術史学専攻卒の穂葉るながお届けする、美術に関するブログ。素敵な作品と作家さんを紹介します。たまに人材や教育の記事も。

文学って何のためにあるの?-実学偏重教育への警鐘-

f:id:MinoruhaRuna:20190923132823j:plain

はじめに

みなさん、2022年度から高等学校の国語教育の制度が変わるというニュースはご覧になりましたか?

私は8月末に、新聞のコラム天声人語を読み知りました。高校の国語で文学が選択科目になるというのです。上にリンクをはった記事の中で、「選択科目の中から複数の科目を履修することも可能なため、必ずしも論理国語しか勉強しない、という事態にはならない。」と文科省は答えていますが、高校側に選択の判断は委ねられているため、入試対策として文学国語が軽視される可能性は大きいです。

新しく導入された論理国語は、実用的な行政のガイドラインや駐車場の契約書を読むもの。それを受けて、歌人で元国語教師の俵万智さんが「短歌は31字で百字分でも伝えられる。一方、百字で百字分を伝えるのが契約書。それを国語で教えるのは、言葉を、現実を留めるピンとしてしか見ていない。」という意見を示したことが天声人語で伝えられていました。とても共感しました。

天声人語を読んで考えたこと

天声人語を読み、小学校のころから国語の小説分野が好きで、大学も文学部に進んだ私も、心苦しい気持ちになりました。中学生や高校生の時、芥川龍之介の「トロッコ」の授業を受けて、主人公の「塵労」(じんろう:世の中の煩わしい苦労)がキーワードであると知ったときや、森鴎外の「舞姫」でヒロインのエリスの母性に焦点が当てられていると聞いたときは、「文学は奥深く面白いなぁ」と感じた思い出があります。

私は、文学を学ぶことで、作者や登場人物の心情を推し量ることを通じて「他者への共感力」が培われると思っています。これはSNSが隆盛し、テキストで多くの人とコミュニケーションするようになった現代でこそ必要な実用的な能力だと思います。

また、情景などを思い浮かべる「想像力」が養われることも、ありきたりな意見ではありますが忘れてはいけないと思います。

文学部は何の役に立つのか

ここで、関連するご意見として、大阪大学の金水教授のお考えを引用したいと思います。文学部の卒業生への祝辞の中で、文学だけではなく史学や芸術学も含んだ『「文学部」が何の役に立つか』について語られています。

 

文学部の学問が本領を発揮するのは、「なぜ、なんのために生きているのか」という問いにぶち当たったときや、人生の苦難に直面したとき。そういう時にその問題を考える手がかりを与えてくれるとおっしゃられています。

小説を読むことで様々な人物の人生を追体験できる点、歴史を学ぶことで国同士のかかわり方や在り方、発展の仕方を学ぶ点、芸術を学ぶことで作者の生き様や作品に込められたメッセージを読み取る力をつける点。

たしかに文学部での学びは人生での普遍的で抽象的な問いに立ち向かうためのエッセンスが詰め込まれているように思いました。

すぐ役に立つ知識はすぐ使える代わりに、錆びていくのもあっという間である傾向にあります。それに対して、文学は即効性には欠けるけれども、生きていく中のターニングポイントでじわじわと効果を示すものなのではないでしょうか。

おわりに

いかがでしたか?この記事を読んで文学の力とは何かを考えていただけるきっかけになりましたら幸いです。文学が社会の隅に追いやられるような風潮が弱まりますように。


【ご注文殺到につきお届けまでお時間を頂戴します】濃厚なプリン【天国のぶた】(4個入)【ギフト】スイーツ 誕生日 内祝い お返し プレゼント 敬老の日 お歳暮