まんぷくまなこ

文学部美術史学専攻卒の穂葉るながお届けする、美術に関するブログ。素敵な作品と作家さんを紹介します。たまに人材や教育の記事も。

【書評】夢泥棒に負けなかった起業家の本「暗闇でも走る」

はじめに

今回ご紹介するのは、キズキ共育塾代表の安田祐輔さんが書かれた本「暗闇でも走るー発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由」です。

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本の概要

この本では、親の不仲、父からのDVなど子供のころからつらい出来事を多く経験した著者が、悲惨な状況から脱出するために一念発起して受験勉強し、ICU国際基督教大学)に合格します。在学中に学生団体の代表を務めたり、バングラデシュで現地の人たちと交流したりして、「尊厳を傷つけられた人たちが何度でもやり直せる社会をつくりたい」という人生のミッションを見つけます。

そのあと総合商社に入社するも、4か月で周りと協調できなくなってしまい、転職先も見つからず絶望。ついにうつ病を発症してしまいます。闘病する中で自分が求める環境とやりたいことを棚卸しし、残された唯一の道でもある「勉強を教えるという事業を自分でやる」という選択肢を選びます。ミッションと照らし合わせ、「不登校や中退を経験した子向けの塾を開く」というアイデアが思い浮かびます。

立ち上げ期には、辛い経験を持つ生徒を発見することや、講師の数と質の担保、資金のやりくりに苦労します。ですが続けていくうちに生徒数も増え、難関大学に合格するという目標を達成する生徒も出てきて事業は軌道に乗り、領域も拡大していくまでを綴っています。

著者の経験した闇が深い分、立ち直っていくまでの過程に引き込まれるサクセスストーリーでした。

印象的だったシーン

この本を読んで印象的だったのは、安田さんが起業し始めたばかりで勉強しているころの次のシーンです。

不登校や中退の子どもたちを支援するうえで知識も経験も足りていなかったから、積極的に講演やイベントに出かけた。もっと学ばなければいけないと思った。「そこの若い君は、何を目的でこの講演に来たのかな?」あるひきこもり支援団体の主催する講演を聞きに行った時のことだった。会場でメモを取りながら聞いていた僕は、突然当てられた。会場には50名ほどの人。「不登校・中退の子たち向けの、進学塾を始めました。その勉強になればと思い、この講演に来ました」(中略)「そんなありきたりな事業、何でやりたいの?誰も求めてないと思うよ?」50人の前で思いっきり馬鹿にされた。「アドバイスありがとうございます!」僕は笑顔で答えながらも、帰り道に胃痛で駅のトイレで吐いてその場でうずくまった。

 

夢泥棒はどんなところにでもいるんだなぁと感じました。この時もしもこの講演者の言葉を安田さんが気に病み続け、事業の運営に響くようなことがあれば、救われるはずだった生徒さんも救われないで終わってしまっていました。中身の細かいアドバイスではなく事業自体を否定するのは無責任すぎますよね。志を持って学んで行動している人の可能性なんて誰にも優劣をつけられないはずなんです。

安田さんはこの時、「結果を出していないんだから馬鹿にされてもしょうがない。成長して事業を成功させればいい」と、負けずに成果にコミットすることを誓ったそうです。この強い心の持ち方を真似したいものですね。

おわりに

このほかにも、本の中では挫折から光を見出すための思考法など教訓になる経験談がたくさん書かれています。

特にこの本がおすすめなのは

発達障害・ひきこもり・うつ病などしんどい経験を持つ方

・単なる仕事ではない、人生のミッションの見つけ方が知りたい方

です。

みなさんもぜひ読んでみてくださいね。それでは、この記事がみなさんの役に立つ記事でありますように!


暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由